先日、大動脈弁閉鎖不全で生体弁を置換し20年以上経つという話を書いた。
似たような経験する人のため、若いお医者さんのためにボクの経験をしたためておこうと思う。
ただし、この記録はあくまで個人的な記録であって他の方に対し同じようなことを勧めているわけではないし、その後の保証はできない。医師からの禁止事項もある。読む際は気を付けてほしい。
また、心の広いお医者さんには、患者のQOL向上のためこんな一例もあることを知って頂き、これからの弁置換手術必要患者さんに接する際、頭の片隅にでも記憶を残して頂けると幸いである。
まずは時系列で現在までの経緯を。
若かりし頃、ネパール、インドをバックパックで旅行している時に体調不良(腹下しからの熱)を起こし、1件目に訪れたクリニックでもらった薬を飲み切っても治らず、たまり兼ねて公立の大病院に駆け込んだところ、聴診器で心臓に雑音がするので、すぐに旅行を取りやめて日本に帰り、精密検査を受けるべきだとのインド医者さんの指示に従い、日本に帰って検査したところ、大動脈弁閉鎖不全だった。
検査を重ねた結果、恐らくなった原因は分からないが、生まれた頃から閉鎖不全にはなっていただろうとのこと。それがたまたまインドで分かったということらしい。ただ、その時点では重症ではなかったので、しばらく数年様子を見て(手術する年齢を出来るだけずらして)人生において手術する回数を減らそうということになったのだ。
弁置換手術には大きく2つの選択肢があり、
人工弁か
生体弁か
の2択だ。
人工弁は素材がカーボンかチタンでできており、一生使える代わり(手術は一回で済む)に弁の開閉部に血の凝固ができないように手術後永遠とワルファリンを飲み続けなければならないし、血が止まらなくなるので運動制限もあるし、お酒も飲めなくなる。
手術は一回で済む代わりにその後の行動制限付きなのだ。
一方、生体弁は、牛と豚があり、ボクの時は牛だったが(生産側の理由のようで今は豚がほとんど)、使用期間は15年を目処と言われていた。つまり、15年後には再度手術が必要となる。
その代わり、運動もできるし、薬も飲まなくていい。アルコールはダメだと言われた。
今ボクは生体弁での手術後20年を超え、定期検診も1年に一回だけだ。心臓に関する身体の不調は一切ない。脳の不調(心臓とは一切関係ない)があるまでは普通に運動もできていたし、今も適度な運動はしている。傍からの見た目は全く普通だ(健康面で)。
有難う、牛さん!
手術をする際、30代だったが、人工弁を勧められていて自分もそうするものだと観念していた。術後は、薬を飲み続ける人生が待っているモノだと思っていた。
しかし、手術のための入院をして手術日の数日前に担当医に急患が入り、ボクの手術が延期となってしまった。そこで、延期となったことで前に一度行った手術前ミーティングを再度行うこととなった。
改めてボクは年齢が比較的近い担当医に今まで聞かなかった質問を聞いてみた。
「アナタが手術を受けるなら人工弁にしますか。生体弁にしますか。」と。
担当医は即答で、
「生体弁です。」と返した。
驚いたね。
今まで散々ボクに人工弁を勧めておいて、自分なら生体弁を選択するなんて。
理由を聞くと、術後の生活が自由なのと、医学の進歩を考えれば、今後十何年か後に手術する時はもっと精度もあがるだろうから、2回目に不安もないと。
そんな話、今までいろいろ話をした中で全くでなかったのに。
きっと人工弁会社や大学病院とかに大人の事情があるだろうから、そこは詰め寄らなかった。それより、あと数日に迫っているボクの手術を生体弁に変更することは可能かどうか聞いてみたら、可能だと言う。
即答で、
「生体弁に変更お願いします。」と答えた。
ボクもボクなりにモヤモヤがあったのだ。
エックスサーバー
実際現在なら開胸しないで手術する手法も確立されているが、当時なら開胸は確実でそれを人生で2回することは相当悩ましいことであった。
(今でも状況により開胸は必要かもしれないが)
ただ、生体弁にすることでのメリットをしっかりとは伝えてくれてはいなかったように思う。ボクは運動が好きで、何かと制限されることが嫌いだ。
術後の長い人生を薬や生活を気にしながら生きることと、制限なしに生きることが出来ていずれ2回目の手術の機会がやって来た時に、その時に人工弁を選択することもできるのだ。これは延期された直後の手術前ミーティングの時に相談済みだ。
20年間を越え結果、ボクは生体弁で良かったと思っている。
運動も自由にできたし、海外旅行もできたし、好きなことも色々できた。
何よりも大好きなお酒もずっと飲み続けることが出来た…。
そう、ボクは手術後20年間アルコールを飲み続けていたのだ。
今後生体弁にする人にお勧めすることではないが、十把一絡げに患者に何でもダメと言うお医者さんには聞いてもらいたい。お医者さんの立場としてアルコールを飲ませない方が助言として「安心安全」だろうが、患者のQOLを患者の立場に立って考えたときに本当はどうなのだろうか。
ボクにアルコールをダメと言ったお医者さんは手術を担当した医者とは違うお医者さんで付き合いも長くない。だけど彼は飲んではいけない理由をボクの性格では飲み始めると制御が利かなくなるからと言った。
ある意味当たっている。
流石いろいろな患者を診ているだけあって人間洞察が素晴らしい。
だからこそ、ボクは制御しながら飲むことにした。w
毎日缶一本にグラス一杯を休肝日なく。
呑み会は喜んで参加する。
残念ながら、最近はペースが落ちてきた。w
お酒での実害はない。
定期健診での健診結果はいつもOKだ。
お酒のことは依然内緒だけど。w
決して他の方に勧めているのではない。
そんなバカ例がある、極端だが実例報告までだ。
脳出血まではジム通いも定期的にしてきて、山歩きも積極的にしてきた。
楽しめた。
30代、40代と仕事が忙しい時に色んな事をして乗り切れた。
ボクは、生体弁で良かったと思う。
性格にもあっていたと思う。
今後置換手術を受ける予定の方は、メリットデメリットをよくよく考え、生活スタイルと自分の性格を総合的に考え、選択した方がいいと思う。
手術の在り方もボクがした頃とは大きく技術が異なっているだろうから、手術自体の負担も違うだろうし、地域差(手術の技術差)もあるだろう。
アルコールの件は、ボクの自己責任で行っているダメダメ例なのでお医者さんに相談する案件ではないだろうと思う。
ヒトには個体差があって当たり前だと思う。だからこそオモシロい。
旧ツイッターで時々流れる海外の90歳以上長生きした高齢のお婆さんの長寿の秘訣が「ドクターペッパー」を毎日飲むことだという記事がある。
お婆さんはドクターペッパーを飲むなと忠告した担当医を二人先に見送ったという。
ボクの好きな話だ。
ボクも長寿できたら、死ぬ間際お医者さんに伝えたい。
「酒は旨かったゾ。」と。
なんなら、ボクの生体弁を製造会社に寄贈してもいい。酒を飲み続けてきた心臓に付けた生体弁の成れの果てとして。
所謂、常識や科学的論拠や、過去からの言い伝え、なんでもいい、ともかく皆がしてきた慣例に従うことに疑うことなく従うだけで、相手のことを考えずただ事情を伝えるだけの医師ならそんな医師の助言などいらない。
今ならネットの方がマシだ。
我々も自分で考えよう。
最後に因みにだが50代で脳出血した原因はAVM(脳動静脈奇形)でアルコールとは一切関係はない。生まれつきの身体的問題である。
これにより死ななかったこと、身体に不自由な麻痺が残らなことを含め今までも全て、ボクは幸せな人間だったと思う。
コメント