読書感想:「ある行旅死亡人の物語」を読んで思うところ。オモシロかったが、そこまで立ち入っていいのかどうか疑問。

「正人」の日記

「ある行旅死亡人の物語」は書店で目立つところに置いていて気にはなっていたが、SNSからもちょくちょく噂を聞くようになったので買って読むことにした。

まず「行旅死亡人」と言う言葉自体聞き慣れないが、

行旅死亡人(こうりょしぼうにん)とは、日本において、行旅中死亡し引き取り手が存在しない死者を指す言葉で、行き倒れている人の身分を表す法律上の呼称でもある。また、本人の氏名または本籍地・住所などが判明せず、かつ遺体の引き取り手が存在しない死者も行旅死亡人と見なす。「行旅」とあるが、その定義から必ずしも旅行中の死者であるとは限らない。

Wikipedia

以上のような方で、そう言えばニュースなどではそんな方々が最近多く居るとは聞く。そして、その方々なりに人生のストーリーがあるだろうし、人によっては波乱万丈な人生を送った方もいるだろう。
だが、この本の調査対象になった人は、謎が多いのだ。

2020年4月。兵庫県尼崎市のとあるアパートで、女性が孤独死した。

現金3400万円、星形マークのペンダント、数十枚の写真、珍しい姓を刻んだ印鑑……。記者二人が、残されたわずかな手がかりをもとに、身元調査に乗り出す。舞台は尼崎から広島へ。たどり着いた地で記者たちが見つけた「千津子さん」の真実とは?「行旅死亡人」が本当の名前と半生を取り戻すまでを描いた圧倒的ノンフィクション。

毎日新聞出版社

謎解きノンフィクションとしては興味そそる内容ではないだろうか。実際、一気読みをするくらい面白かった。

また昨今行方不明者映画が何気に流行っているような気もするが、地下ではその数も実際には多いのだろうか。彼らの失踪事情に興味をそそられる自分がいるのも情けないが、正直なところガッツリと聞きたいのは否めない。

以下、ネタバレあり。

復刊ドットコム


故人が残した遺産の最終的な処分の仕方を決めるため、家庭裁判所が「相続財産管理人」を選出し、相続人を探し出そうと警察や探偵と使って探しきれなかった案件を新聞記者が結果的に探し出したのだが、その過程は素晴らしくオモシロク、故人の生き様に肉薄する調査力だった。
しかし肝心と言っていい「なぜ」の部分に関しては色々と分からず仕舞いだった。彼女の歩んできた人生の経路は、大変とは言え今回のような調査でわかるのかもしれないが、色々な「なぜ」は何一つ解き明かせなかった。
これは彼らの調査力を批判しているのではなく、この度の行旅死亡人の彼女の特異性の特徴だともいえるのではないだろうか。

一般的に生きている「証」、生きてきた「証」は意識してなくても残るものだと思われる。だがこの度のケースでは故意に消された可能性が伺える。
今自分が死んだら証拠だらけで、死ぬに死ねない。
急げ、断捨離!

男性の存在も不思議でたまらない。何一つわからないことってあるのだろうか。偽名、偽の職場名を使う必要性は何。
一緒に行動しているはずなのに一緒に写真には写らないのは何故。
数名が子どもが一人いたと証言しているがその気配がないのは何故。
何故を書き続けるとキリがないくらいの謎多き人生。

謎は多く好奇心は駆り立てられるが、ただ彼女自身は謎のままで人生を通そうとしていた気配がある。もし、犯罪でない限りこれはどこまで他者が立ち入っていいものなのだろうか。
プライバシーの問題をとやかく言う昨今において「ドキュメンタリー」の名を語り他人の人生を土足でドタバタ入り込むようなものだろう。まさにここが当初好奇心がありながら、この本を購入するかどうか迷ったところだ。
結局、買ってしまったわけだが。

「行旅死亡人」のワードのインパクトが強く、負けちゃった。


この話の流れで「行旅死亡人」とは大きくズレるが、時に歴史上の人物や文学者の「恋文」(恋文に限らないが)などがのちに発見されて大きく報道されることがあるが、あれも大概どうだろうと思うことがる。
研究者はその研究対象者の考え方や立場などが分かる貴重な資料となる、などというが、死んだ方からすればええ迷惑。じゃない?

「あんたのことが好きで好きで夜も寝れん。」って試しに書いた恋文的なモノを100年後の奴らが見つけて大発見だ! なんて。w

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